センセイと一緒【完】



――――そして、柊史も。

あの修学旅行の時から、柊史が鈴菜を見る目が変わった。

他のクラスメイト達は気付いていないようだが、妹である和泉にはその変化がはっきりと分かった。

たまに見せる、切なげな視線。

……昔から鈴菜は、兄の心の中にいた。

兄の心の一番優しい、綺麗な部分に住んでいた鈴菜。

鈴菜が東京や札幌に行っていた間、兄は態度にも言葉にも示さなかったが、和泉がたまに携帯で鈴菜の写真を見せると懐かしげな優しい視線を向けていた。

昔から兄の傍には女の影が絶えなかったが、それは自分の意識を鈴菜から逸らすためだったように和泉には思える。


「うーん……」


そして、一番問題なのはあの男だ。

鈴菜の心を最も振り回しているあの男。

あの修学旅行の日、つい勢いに任せて言ってしまったが。

和泉としては後悔していない。

……というかあの程度で引き下がるようでは問題外だ。

そんな男を鈴菜に近づけるわけにはいかない。

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