センセイと一緒【完】
4.失われた恋
4月の中旬。
木曜日の放課後。
鈴菜は視聴覚室で歴史研究部に参加していた。
今日のお題は『日本近代文学』だ。
夏目漱石や太宰治、芥川龍之介など……どこか固いイメージの本が机の上に並んでいる。
「中原中也ですか、懐かしいですね」
尚哉が目を細め、一冊の本を手に取る。
部員たちの視線の前で、尚哉は少し笑ってパラパラとページをめくった。
中原中也は明治時代に生まれ、かなりの数の詩を残したが若くして夭逝した詩人だ。
「僕は昔から中原中也の詩が好きでして。特に『山羊の歌』ですね」
尚哉は言いながらあるページで手を止めた。
少し文字を追った後、顔を上げて部員を見回す。
「……少し、朗読してみましょうか?」
「はい、お願いします!」