センセイと一緒【完】
部員たちの声に尚哉は軽く頷いた。
しばしの沈黙の後、少し低めの、甘いテノールの声で詩を読み始める。
鈴菜は部員たちとともに尚哉の声に耳を傾けた。
『私の聖母 (サンタ・マリヤ) ……
とにかく私は血を吐いた。
おまえが情けを受けてくれないので、
とにかく私はまいってしまった……・
それというのも私が素直でなかったからでもあるが、
それというのも私に意気地がなかったからでもあるが、
私がお前を愛することがごく自然だったので、
お前もわたしを愛していたのだが……・
今更どうしようもないことではあるが、
せめてこれだけ知るがいい――
ごく自然に、だが自然に愛せるということは、
そんなにたびたびあることでなく、
そしてこのことを知ることが、
そう誰にでも許されてはいないのだ』
(中原中也 『山羊の歌』盲目の秋より抜粋)