センセイと一緒【完】



「先生っ!」


叫びながら鈴菜が走り寄ると、柊史は驚いたように振り向いた。


「……鈴?」


あまりに突然だったので、呼び方が昔のままになっている。

それを気にする暇もなく、鈴菜は柊史を見上げ、叫んだ。


「先生っ! 眼鏡を貸してくださいっ」

「……は?」

「すぐお返ししますからっ」


怪訝そうに首を傾げる柊史の顔に、鈴菜は背伸びして腕を伸ばした。

唖然とする柊史の顔から眼鏡を取り、踵を返す。


「おい、お前っ!?」

「ちょっとだけお借りしますっ」


言い、鈴菜は踵を返してパタパタと駆け出した。

その背を、柊史はぼんやりした視界で呆然と眺めていた。


< 276 / 294 >

この作品をシェア

pagetop