センセイと一緒【完】
「先生っ!」
叫びながら鈴菜が走り寄ると、柊史は驚いたように振り向いた。
「……鈴?」
あまりに突然だったので、呼び方が昔のままになっている。
それを気にする暇もなく、鈴菜は柊史を見上げ、叫んだ。
「先生っ! 眼鏡を貸してくださいっ」
「……は?」
「すぐお返ししますからっ」
怪訝そうに首を傾げる柊史の顔に、鈴菜は背伸びして腕を伸ばした。
唖然とする柊史の顔から眼鏡を取り、踵を返す。
「おい、お前っ!?」
「ちょっとだけお借りしますっ」
言い、鈴菜は踵を返してパタパタと駆け出した。
その背を、柊史はぼんやりした視界で呆然と眺めていた。