センセイと一緒【完】



10分後。

無事ゴールした鈴菜は、眼鏡を片手に肩を上下させていた。

1位にはなれなかったが、まずまずの順位に入ることができた。

……と。

柊史の眼鏡を手にしていることに気付き、鈴菜は青ざめた。

……つい勢いで柊史の顔から眼鏡を奪い取ってしまった。

借り物競争とはいえ、自分は担任になんてことをしでかしたのか。


「……まずっ……」


鈴菜は慌てて踵を返し、校舎の方へと向かった。

さっき、柊史は校舎に向かう途中だったような気がする。

鈴菜は体育館の脇の通路を抜けようとした。

その時。

通路脇の水道の傍に柊史が立っていることに気付き、鈴菜は足を止めた。

生徒も先生も皆グラウンドにいるらしく、辺りに人気はない。


「……先生」



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