センセイと一緒【完】
椅子を立って近づくと、柊史の手が鈴菜の肩を引き寄せ、無理やり顕微鏡の前の椅子に座らせた。
肩に触れた手と背後から香るホワイトムスクの香りにトクンと胸が高鳴る。
「ほら、コロニーが出来てきただろう?」
「……」
見ると、シャーレの中に何やらぽつぽつと水玉模様のようなものができ始めている。
よくはわからないが、これがコロニーらしい。
「つまり納豆菌が強すぎたってことだな。相当薄めないとコロニーはできないということか……」
柊史はぶつぶつ呟きながら薬品が並んだ棚の方へと歩いていく。
鈴菜はその後ろ姿を見つめながら、昔の記憶を思い出した。
昔、鈴菜がまだこの町にいた頃。
鈴菜と和泉、そして柊史の三人は、よく近くの川に行っては日が暮れるまでいろいろな生き物を採って遊んだ。
年上だった柊史はその頃から生物に詳しく、見つけた動植物の名前をよく二人に教えてくれた。