センセイと一緒【完】




そんなことを考え込みながら顕微鏡を覗き込む鈴菜の横で、和泉はシャーレと水の入ったビーカーを片手に何やら作業をしている。


「これさ。納豆一粒で充分なんじゃないの? 初めに水に入れる量が多すぎるんだよ」

「なるほど~……」

「入れ過ぎるとあっという間に栄養がなくなる。だからまずは一粒で……」


和泉の言葉を聞きながら、男子生徒たちがなるほどといった顔でノートにメモを取っている。

……もはやどちらが生物部員かわからない。

和泉はどの教科も万遍なくできるが、特に生物は得意で、一年の時から生物の成績は常に学年トップだ。

本人いわく『別に好きってわけじゃない。得意なだけ』と言ってはいたが……

やはり兄妹なのだろう。

鈴菜はくすりと笑い、顕微鏡に視線を戻した。


その後。

日が沈みきった頃、二人はようやく解放された。

かつてない疲労感。

……しかしちょっと、楽しかったかもしれない。

鈴菜は実験の内容を思い出しながら、和泉とともにバス停への道を歩いて行った。


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