センセイと一緒【完】
放課後。
鈴菜は机の上を片付けた後、社会科準備室へと向かった。
社会科準備室は渡り廊下を渡った別棟の3Fにある。
ちなみに図書室は同じ建屋の2Fで、歴史研究部を行う視聴覚室は3Fにある。
「失礼しまーす……」
社会科準備室は3Fの隅にあり、中には授業で使う大きな巻き年表や日本地図、地球儀などが所狭しと並んでいる。
古い資料が多いせいだろうか、図書館の古書室と同じ空気が部屋に満ちている。
それらの資料の山の奥に、社会科の先生達の机が並んでいる。
尚哉の机は一番奥で、入り口からは資料に遮られて見えない。
資料の間をすり抜けて鈴菜が近づいていくと、机にいた尚哉がそれに気づいて立ち上がった。
「ああ、森下さん」
「……相変わらずすごいですね、ここ」
「僕も片付けなければと思ってはいるんですけどね……」
と言う尚哉の机の上が一番散らかっている。
尚哉は物腰柔らかで丁寧だが、片付けや整理整頓はあまり得意ではないらしい。
その端正な顔と落ち着いた雰囲気からは想像できない、尚哉の一面。
それを知っているのは鈴菜を含め、歴史研究部の部員などごく限られた人間だけだ。
「白崎先生の机の上をまず片付けた方がいいような気がしますけど?」
「はは、そうですね。またいずれ片付けますよ。……では行きましょうか、森下さん」
尚哉は苦笑し、ドアの方へと歩いていく。
鈴菜もそれに続いた。