センセイと一緒【完】
図書室に入った二人は、図書室の一番奥にある第二書庫へと向かった。
第二書庫には主に古い本や貴重な本を置いてあり、基本的に館外への持ち出しはできないことになっている。
今回は歴史研究部で使うため、持ち出しの許可が下りたらしい。
第二書庫はさほど広くなく、二人の他には誰もいない。
「今日使うのは、これらの本です」
尚哉は机の上に積まれた本をぽんと叩き、鈴菜に言う。
鈴菜は背をかがめ、積まれた本のタイトルを確認した。
「古事記、源氏物語、伊勢物語、宇治拾遺物語……」
どうやら日本の物語文学の本らしい。
タイトルを確認する鈴菜に、尚哉はくすりと笑った。
「今日の授業でちょうどやった部分ですね。覚えていますか?」
尚哉は手を伸ばし『伊勢物語』を手に取る。
その半袖の袖口から覗くうっすらと筋肉がついた腕に鈴菜はドキッとした。
……ふわっと香る、爽やかなシプレーの香り。
森林を思わせるその香りは、尚哉の落ち着いた雰囲気によく似合っている。