センセイと一緒【完】
鈴菜が言うと、尚哉は嬉しそうに笑った。
――――柔らかく美しいその笑顔。
近くで見ると破壊力抜群なその笑顔に、鈴菜は思わず凍りついた。
固まった鈴菜に、尚哉は楽しげな声で続ける。
「『筒井筒』はですね。昔、とある男女が井戸の周りで遊んだりしながら幼馴染として育ったのですが、年頃になってお互い恥ずかしくなり、疎遠になるんですね」
「……」
「けれどお互い忘れられずに、大人になる。そしてある時、男からの文をきっかけにお互いの想いを知り、二人は結婚する。そういう話です」
「へぇ……」
ロマンチックな話だ。
平安時代というと今からもう1500年以上前だが、男女の仲や恋愛というのは今も昔も変わらないらしい。
「どんな物語でもそうですが、昔は今と違って携帯もなければ車もない。ですから会うだけでひと苦労なんです」
「……」
「だからその分、会えた時の喜び、ましてや想っていた相手と結ばれたときの喜びは大きかったんでしょうね」
尚哉はしみじみと言う。
なんかとても実感が入っている気がする。
ひょっとして白崎先生は誰かに恋をしているのかもしれない。
などということを思いながら、鈴菜は話を聞いていた。
「さて、ではそろそろ視聴覚室に行きましょうか?」
「はい!」