センセイと一緒【完】
「今回は俺より芹沢の方が上だね」
直樹だ。
図らずも和泉と直樹に挟まれた形になった鈴菜は、ひぃと背筋を強張らせた。
周りの視線がとても痛い。
しかしそんな鈴菜を気にすることなく、二人は鈴菜の頭越しに会話を始める。
「たまたまだよ。通算ではあんたの方が勝ってるでしょ? 生徒会長サン?」
「いや、俺の集計によるとほぼ互角だよ」
「そう? ……まぁいいけど。あたしはそれより、鈴にご褒美をあげたいね」
言い、和泉は背を屈めて素早く鈴菜の頬にちゅっと口づける。
突然のことに硬直する鈴菜の周りで、キャーッ!!と黄色い歓声が上がる。
――――既にご褒美ではなく嫌がらせだ、これは。
青ざめる鈴菜を直樹が横から心配そうに覗き込む。
「大丈夫? 森下さん」
「笠原君……」
「芹沢、森下さんが嫌がってるだろう? なぜ君は……」
と言いかけた直樹に。
和泉はその切れ長の二重の瞳を細め、ふふっと笑った。
……その実に楽しげな笑顔。