センセイと一緒【完】
和泉ははぁと息をついた。
直樹以外にも鈴菜に想いを寄せている人間はいる。
明確なのは一人。明確でないのも一人。
――――鈴菜を幸せにするのは、誰なのか。
傍観者の立場でしっかりと見極め、必要に応じて鈴菜を守らなければならない。
自分が男であれば和泉もこの戦いに参加しただろう。
けれど和泉は女で、鈴菜の友人だ。
昔から一緒に育った幼馴染。
和泉が一番辛いときに、傍にいて支えてくれた幼馴染。
鈴菜には幸せになってほしい。
和泉は右膝を立て、ズボンの上から火傷の痕を押さえた。
この傷は小学校一年の頃、父親だった人間に熱湯を掛けられてできたものだ。
……昔。
和泉の母は柊史の父と不倫の関係にあった。
柊史の母から父を奪って結婚したものの、和泉を身籠った頃に父のDVが始まり、母も和泉も、そして父の連れ子として一緒に住んでいた柊史もDVの被害に晒された。
それが原因で結局両親は離婚し、和泉は母のもとへ、柊史も実の母のもとへと引き取られていった。