センセイと一緒【完】
「これはですね。僕が去年の桜羽大祭で能を奉納した時、身に着けた衣装なんですよ」
「……え?」
鈴菜は目を丸くした。
……能を奉納?
驚く鈴菜に、尚哉はくすっと笑い、衣装を見上げた。
「僕の家は代々神主をしてて……って、この間言いましたっけ?」
「……あ、はい」
「で、僕も昔から神事に携わってまして。能もその一つです」
尚哉は面をじっと見つめながら、楽しげに言う。
鈴菜はその端正な横顔を驚きとともに見つめていた。
「といっても本職は教師ですからね。町の祭りや氏子祭の時に、ちょっと練習して奉納しているだけですけどね」
「すごいですね、白崎先生……」
鈴菜は心底驚き、能の衣装をもう一度見た。
桜羽大祭は鈴菜も昔、この町にいるときに何度か行ったことがある。
まだ『桜羽能』は見たことがないが、あの大舞台で能を舞うというのはすごい。