センセイと一緒【完】
「能に興味がありますか? 森下さん」
「えっ、と、その……」
「もし興味があれば、ご招待しますよ。もう今年は終わっているので来年になりますけどね。……ただし」
尚哉は鈴菜に向き直り、じっと見つめた。
……夕凪を思わせる落ち着いた優しい瞳。
けれどどこか強引さを感じるその視線に、鈴菜は思わず息を飲んだ。
「招待したからには、絶対に来てもらいますよ? ……いいですね、森下さん?」
いつになく強い口調で言う尚哉に、鈴菜は軽く息を飲んだ。
……なんだろう。
尚哉がこんな風に自分を見、こんな風に言うのは珍しい。
戸惑う鈴菜の肩をぽんと軽く叩き、尚哉は別の展示スペースの方へと歩いていく。
その背を、鈴菜はドキドキしながら見つめていた。