センセイと一緒【完】
「さ、できたよ、鈴!」
「……」
自分ではよくわからない。
困惑の表情を浮かべる鈴菜を、和泉はバックヤードの入り口の方へと連れて行く。
鈴菜はそこに直樹がいることに気づき、息を飲んだ。
どうしよう、こんな格好を笠原君に見られるなんて……。
と思った、その時。
「……っ!」
直樹が鈴菜に気づき、目を見開いた。
しばし呆然と鈴菜を見つめた後、一歩、また一歩と鈴菜の方に近寄ってくる。
いつもは爽やかな瞳が今は驚愕に見開かれている。
やがて直樹は鈴菜の前に立ち、見下ろした。
「森下さん」
「……」
緊張で動くことができない。
そんな鈴菜の耳元に、直樹は背を屈めてその形の良い唇を近付けた。
さらっとした直樹の前髪が鈴菜のこめかみに触れる。