センセイと一緒【完】
「ちょっと待ってよ、和泉っ」
鈴菜は昇降口を上がり、校舎へと入った。
校舎は正門を入ってすぐの右手にあり、鈴菜の所属する2年B組の教室は2階の真ん中あたりにある。
ちなみに正門の左手には体育館や弓道場、プールなどが並び、そのさらに奥にグラウンドがある。
鈴菜は教室に駆け込み、席に座った。
肩で息をしながら机の中から教科書を出す。
……確か次は国語だったような。
とちらりと隣の生徒の机を見た時。
隣の席の男子生徒が楽しげに鈴菜を見ていることに気づき、鈴菜は眉を上げた。
「次は現国だよ。急いだ方がいいよ? もう先生来るから」
と爽やかなテノールの声で言う、その男子生徒は……。
笠原直樹、17歳。学級委員長にして生徒会長。
今時の高校生らしいレイヤーカットの黒髪に、朝焼けの空を映したかのような明るく爽やかな瞳。
その端正で精悍な顔立ちは和泉に負けずとも劣らないレベルだが、それを気に掛けない朗らかな性格がその瞳に表れている。
背もクラスの男子の中では高く、健康的な引き締まった長身をブレザーに包んだその姿は女子生徒の憧れの的だ。
性格は親切で真面目、生徒会長なだけあってリーダーシップに優れ、何事にも卒がない。
――――なぜ同じ教室に、王子クラスの人間が二人もいるのか。
よくはわからないのだが、2年B組は全校生徒にとって羨望の的らしい。