センセイと一緒【完】



一時間後。

鈴菜は盆を片手にバックヤードに向かった。

あと20分で交代の時間だ。

……あと、少し。

鈴菜は注文が入ったコーヒーと紅茶を淹れようと、バックヤードのポットに近づいた。

紙コップを取り、インスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。

その時。

ドンッと後ろから何かがぶつかり、ポットのお湯がパシャッと右手の親指にかかった。


「あつっ!」


と、思わず声を上げた鈴菜の顔を、横から覗き込んだのは……。


「あら、当たっちゃった。ごめんね?」


その完璧なアイラインを施した瞳を細め、うっすらと嗤いながら鈴菜を見る。

……浜田さんだ。

鈴菜は背筋がぞっとするのを感じ、一歩後ずさった。

お湯のかかった右手がヒリヒリしてくる。
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