センセイと一緒【完】
5.想い出の黒い瞳
鈴菜は赤く腫れた指のまま、ウェイトレスの仕事をこなしていた。
既に和泉は弓道部の方へと行っており、この教室にはいない。
直樹も生徒会の仕事で教室を出ているようだ。
「……っ」
鈴菜はカップを持ち上げた手に走る痛みに顔を歪めた。
――――指が、痛い。
あともう少しで担当の時間が終わる。
そうしたら保健室に行こう。
と思った、その時。
「森下? ……なんだその指は?」
後ろから声を掛けられ、鈴菜は振り返った。
そこにいたのは……。
「黒瀬先生?」
柊史は鈴菜の親指を見つめ、眉を顰める。
眼鏡の奥の黒い瞳が気遣わしげに鈴菜の指先を見つめている。
その視線に鈴菜の胸がどきっと高鳴る。