センセイと一緒【完】
「手を出せ」
「……」
恐る恐る鈴菜が右手を出すと、柊史はぐいと鈴菜の腕を掴み、患部にビニール袋を当てた。
鈴菜はなぜかドキドキしながら、自分の腕を掴んでいる柊史の手をじっと見つめていた。
……昔に比べてがっしりした、大きな手。
柊史の体から香る、どこかオリエンタルなホワイトムスクの香り。
こんなに近い距離にいるのは、あの顕微鏡の時以来だ。
……柊史の顔が見れない。
ドキドキに耐えかね、鈴菜は口を開いた。
「く、黒瀬先生。もう大丈夫ですから……」
「何が大丈夫だ。まだかなり赤いぞ?」
「……で、でも……」
胸の鼓動はさらに高まっていく。
鈴菜は視線をそらしたまま言った。
「も、もう大丈夫ですからっ……」
「……だから、何がだ」
「だ、だからっ……」