センセイと一緒【完】
と言い、鈴菜が手を引こうとした時。
その手を柊史がぐっと掴んだ。
「……鈴!」
その、呼ばれ方……
驚きのあまり目を見開いた鈴菜を、柊史は正面から真っ直ぐに見据えた。
……遠い記憶の中の、あの黒い瞳。
ひぐらしが鳴く夕暮れの川辺で、鈴菜を見つめていたあの黒い瞳……。
それと全く同じ目で、今、柊史は鈴菜を見つめている。
「昔からお前は、ヘンなところで強情だったな」
「……」
「何年経っても、人間そんなに変わらねぇってことかな。……お前も、オレもな」
くすり、と柊史は笑う。
その微笑みに、鈴菜は柊史との間にあった壁のようなものが、溶けていくのを感じた。
……懐かしい、遠い記憶。
鈴菜は思わず、呟くように言った。