センセイと一緒【完】
「今日は165ページからだよ」
「ありがとう、笠原君」
鈴菜は慌てて教科書とノートを広げた。
なぜか頬が赤くなる。
……直樹は親切だ。
9月の頭に席替えし、直樹の隣になって2週間ほどが経つ。
席替えの日、鈴菜はあいにく風邪で休んでいたが、直樹の隣になれたので今思えば幸運だったと思う。
直樹は誰にでも優しく親切で、鈴菜にもいろいろと親切にしてくれる。
それは誰に対してもそうなのだが、隣にいる分、他の人より機会は多い。
――――自分だけに優しいわけではない、だから期待してはいけない。
そう思っているのに、直樹と話すたびに胸がドキドキする。
やがて教室のドアが開き、初老の恰幅の良い先生が入ってきた。
現国担当の藤代先生だ。
「はい、教科書開いてー。今日は165ページ、『羅庄門』ね」
鈴菜は直樹に感謝しながら教科書に向き直り、シャープペンシルを手に取った。
藤代先生は教科書を読みながら一行ずつ解説していく。
それをノートに書きとめながら、鈴菜はちらりと隣を見た。