センセイと一緒【完】
「しかし、笠原にこんなに可愛い妹がいたなんてね。驚いたよ」
「こいつがどうしても来たいというから……仕方なく、な」
はぁと息をつき、直樹は言う。
そんな姿は『妹を持つ兄』という感じでどこか柊史の雰囲気と似ているところもある。
……兄、といえば。
先ほど、ここに来る途中の廊下で和泉は柊史とすれ違った。
柊史は今日一日、生物部の展示で第二実験室にいるはずだが……
今はちょうど、教室で鈴がウェイトレスをしている時間だ。
やはり、兄も鈴菜のことが気になるのだろう。
――――素直でない兄。
素直でないのは鈴菜も同じなのかもしれないが。
そんなことを考えながら、和泉はにこりと笑って沙月を見た。
呆けたように見上げる沙月に、和泉は笑顔で言った。
「沙月ちゃん。文化祭、楽しんでいってね?」
「……はいっっ!!」
沙月はもう一度頭を下げる。
和泉は二人にひらひらと手を振り、その場を離れた。
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