センセイと一緒【完】
弓道場からの帰り道。
廊下を歩いていた鈴菜は、理科準備室の前に誰かが立っていることに気付き、首を傾げた。
すらっとした長身に艶やかな黒い髪。
柊史だ。
鈴菜の隣で、和泉もそれに気づいて驚いたような声を上げる。
「あれ、兄貴?」
「何だ、お前達。もう帰りか?」
と言う柊史はワイシャツにネクタイを締め、黒いストライプのスーツを身に着けている。
白衣を着ている姿しか見たことがなかった鈴菜は、内心ドキッとしながら柊史を見上げた。
少しルーズな黒髪といい色気のある二重の瞳といい……
こう見ると本当にホストのようだが、その姿は文句なしに格好いい。
柊史はビジネスバッグの他に、本を2、3冊脇に抱えている。
そのタイトルを見、和泉が首を傾げた。
「……遺伝子工学?」
「あぁ。これから近くの大学で学会があるんだ。ちょっと顔を出してくる」