涙にキスマーク
コツコツコツ
音はますます大きくなって。
「お、い……!」
あたしと先生の距離も更に近くなって。
「だめだって!おい!」
見上げた先生の顔はぐるぐる感情が渦巻いているみたいに複雑で。
「……頼むからっ」
「ごめんね、」
コツコツ
(あ……)
じわりと目尻に滲んだ小さな涙。
グイッとネクタイを引っ張って
思いっきり背伸びして
そっと雫に口付けた。
「…な……っ!」
コツコツと響く足音はこの部屋を通り過ぎて遠ざかって行く。
「センセーはぜーんぶ、あたしのもの。ね?」
だから、涙一粒にだってあたしの所有印は欠かせないの。
end.