気がつけば愛でした


心配する静奈に高柳は苦笑する。



「心配しずぎ。大丈夫だから。」



“大丈夫”さっきっからそれしか言わない高柳に静奈は余計に心配になる。



「でも…」

「明日休みだし、寝てれば治るから。大丈夫。」
「っ…大丈夫なんかじゃないです!」



高柳の言葉に静奈は声を荒げた。驚いたように顔を上げて目の前に立つ静奈を見上げる。



「橘…?」

「早く帰したいのか知りませんけど、そんな状態で帰れません。なんで頼ってくれないんですか!?」



キョトンとする彼の様子に静奈は悲しくなった。
グィと高柳の腕を取って寝室へ向かい、ベッドに座らせる。
掴んでいるがっちりした腕は変わらず熱い。



「橘、どうした?」

「甘えて下さいよ。」

「え…?」

「少しは人に甘えて下さい。頼って下さい。」



静奈は泣きたくなりそうなのをこらえた。
高柳はなんでも1人でやってしまう。何でも出来るのは分かっているが、本当はそうとう辛いはずだ。しんどいはずだ。

こんなときは頼って欲しかった。

少しくらい甘えて欲しかった。



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