気がつけば愛でした
弟でした
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「ん…」
ベッドの中で高柳は身じろぎをする。
ぼんやり目を開けると部屋の中がうっすら明るかった。
もう朝か…。
ゆっくり身体を起こすと昨日のだるさや熱っぽさはほとんどなくなっていた。
熱は下がったようでホッとする。
「橘…?」
部屋を見渡すがどこにもいなかった。
…帰ったのか。
いつの間に帰ったのか、それもわからないほど眠っていた。
ただ、手を握られていた感覚は覚えている。
「看病なんて久々だな…」
思わずもれた一言に苦い気持ちになりながら、それを入れ換えるように部屋を換気し、シーツ交換、シャワーを浴びた。
シャワーをあびながら、フッと昨日の静奈を思い出す。
『甘えて下さい』
今までそんなこと言われたことなかった。
別に無理をしていたわけではない。人に頼らなかったわけでもない。
ただ、やろうと思えば自分で出来たから。
それに迷惑かとも思った。
なのに、あんなに心配されるなんて思わなかったのだ。
「心配、か」
静奈に心配されて、嫌な気持ちにはならなかった。