気がつけば愛でした




「社長らしい」



静奈はフフッと笑う。
そんな態度だって、きっと社長だってそれなりに色々考えた結果なんだろう。
社長も悩んだと思う。



「でもまぁ、正直、どう関わっていいのかわからないけどな。」



ボソッと呟く高柳に、静奈は以前、社長を嫌いかと聞いた事を思いだした。避けているようだと。
高柳は避けてはいないと言ったが、この話を聞いて納得した。


確かに大人になってから兄弟の関係を作るのは難しい。



「悪かったな、変な話して。忘れて。」



黙り込んでいた静奈に明るく言う。

忘れるなんて無理な話だが。



「誰にもいいませんから」

「あぁ。ありがとう」



誰にも言わない。
社長は“まだ時期ではない”と言っていた。


静奈は偶然、知ってしまったが、静奈が人に話していい話題ではない。


必死で頑張っている高柳の足を引っ張るような真似はしたくなかった。














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