気がつけば愛でした



「嬉しいな、静奈ちゃんが誘いに乗ってくれるなんて。」



上村はノンアルコールを飲みながら呟いた。



「諏訪や高柳に俺のこと何か言われたんだろ?」
「え!?」

「分かり易いなぁ、静奈ちゃん。」



上村は哀しそうに微笑む。それを見て静奈は慌てた。



「違います!別に…」

「いいって。社内でもチャラいって言われているの知ってるし。あながち間違ってなかったし。」


間違ってなかったのか。そう思いつつも、つい「…すみません」と謝ってしまった。



「なんで静奈ちゃんが謝るの。面白い子。でもさ、警戒したって事は少しでも俺のこと意識してたってことだよね?付き合っちゃう?」



突然嬉しそうに振り返って言う。

静奈はその突拍子もない発想にちょっと呆れた。


「そういう言い方がチャラいって言われるんじゃないんですか?」

「かもね。でも誰にでも言ってるわけじゃないよ」

「説得力ないです。」

「マジか」



静奈の返しに楽しそうに笑う。



「静奈ちゃんは高柳と付き合ってるんだっけ?」
「え?違います…けど」
「本当に?付き合ってないんだ?」



付き合ってない。
よくよく考えれば一緒に仕事をすることが多いだけだ。
そんな特別な関係ではない。
…何だろう。ちょっと切なくなった。



「じゃぁさ、マジで俺立候補していい?」

「え?」



驚いて顔を上げた時、携帯が鳴った。



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