気がつけば愛でした






本気だったんだろうか。
それとも遊び感覚なのかな。


静奈は上村の言葉を反芻する。


あの後、どう返事をしていいかわからず黙ってしまうと、上村は考えておいて、と先に店を出てしまったのである。


上村に好意は持っていないが、突然の告白で動揺している。

告白なんてほとんどされたことないのだから。

しかし上村が遊びではなく本気で告白してきたのなら静奈もきちんと返事をしなければならないだろう。


ハァ、と自然とため息がでる。


断るつもりだとしても次に会ったときなんか気まずい…。


そして机に寄りかかった時、フッと思い出した。



「そういえば、貴子先輩。昨日の会議ファイルってどうしました?」

「え?あぁ、見た後、棚に戻しといたよ。」

「そうでしたか。ありがとうございます。」



貴子に渡した後、すっかり忘れていた。戻しておいてくれたことにホッとする。
集中出来てないなぁ。



「元気ないね?どうしたの?」



静奈の顔を見て貴子が聞いてくる。


元気ないように見えるかな。

静奈は貴子に相談しようか迷ったが、『大丈夫』と黙っていることにした。
貴子は上村を軽いと考えているから相談した所で返事は目に見えている。

それに静奈の中では断ることはすでに決まっていた。あとは返事の仕方だろう。
自惚れるわけではないが、あの上村なら納得するまで引き下がらない気がする。



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