気がつけば愛でした
静奈は高柳の背を見上げる。
スラッとした身長に広い背中。それだけでもキュンとする。
なのに―………
「用がないなら電話切るぞ。」
そう言って電話を切ろうとしたとき、携帯から漏れ出た声に静奈はドキンとする。
『……、…』
「いい加減にしろよ、友香。」
高柳が小さく名前を呼んだとき、ああ、やっぱりだと静奈は思った。
電話からもれた女性の声
記憶に新しい声だったからまさかとは思ったが。
静奈はお弁当を片付け、立ち上がった。
「お先失礼します」
「あ…」
電話中の高柳にニッコリ作り笑いを浮かべ、静奈は立ち去った。
高柳は静奈の後ろ姿を見ながら、心の中で舌打ち をした。
また逃げられてしまった
『律?聞いてる?』
電話の向こうからする友香の声。
つくづくタイミングの悪い奴だと思う。
「聞いてるよ。」
『そうつんけんしないでよ。ご飯くらいいいでしよう?』
「どうせお前のことだ、いいって言うまで誘ってくんだろ?」
相変わらず自分勝ってで無邪気で奔放だ。
同時はそこに惹かれていたが。
喜ぶ友香と約束を決める。
高柳としては今更会ったって、と思うが、友香はやはり思うところがあるのだろうか。