気がつけば愛でした




静奈はあれから仕事に身が入らなかった。


何をしていても高柳と友香の姿がチラついてしまう。


友香は高柳に連絡をしていた。番号が変わらなかっただけなのか、この前教えたのか、それは分からないが友香と連絡を取り合えるのは分かった。

胸に苦い気持ちが広がる

静奈は自分が嫉妬しているのだと分かっていた。
それに自分はただの後輩である。

他の女子社員より親しいのは一緒に仕事をしているだけだから。


そう思うのは切なかったが客観的に考えるとそうなのだろう。


元カノの存在は、静奈には大きかった。



沈んだ気持ちのまま鞄を片手に帰る準備をする。


「静奈、帰るの?」



貴子が立ち上がった静奈を見上げる。

貴子はこの間から少し元気がない。



「はい。貴子先輩?」

「…あのさ、静奈…」



と、貴子が言いかけた時、高杉秘書が「橘!」と秘書室に入ってきた。
その様子に静奈はイヤな予感がする。



「何ですか?」

「何ですかじゃないよ。君、渡辺グループの専務に調整の電話したかい!?」

「?はい。打ち合わせの変更ですよね?連絡しました。何かありましたか?」

「連絡が無かったとクレームが付いた」

「えぇっ!?」



静奈は一気に青くなった
クレームが付いた!?




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