気がつけば愛でした
彼は本当に予告通り15分で来た。
インターホンが鳴り、玄関を開けると、彼の姿がそこにあったのだ。
「うそ…ほんとにきた…」
「15分以内で来たろ。っか、かなり酔ってるな。目がぼんやりしてる」
そう言って中に入ってくる。
静奈はただ驚きでその姿を見ていた。
高柳の高級マンションに比べるとかなり狭い1LDKの部屋。
背の高い高柳がいるとますます狭く感じる。
「ちゃんとしてんじゃん。」
部屋をみながらそう言いつつ、高柳は机の上の空き缶を見て苦笑した。
「あ~あ、こんなに飲んで。」
「…そんなにのんでないです」
「酔っ払いは大抵そう言うんだよ。ほら、水買って来たから飲め。」
ポンと投げ出された水をキャッチする。
どうして…。
「どうして…わざわざきてくれたんですか…?」
呂律が上手く回らない。 なんだか目の前が霞む。
これは夢なんじゃないかって思う。
「そうやって泣いてるから。聞いた。取引先との連絡ミスがあったって。帰りも泣きそうにしてたし気になったからさ。」
聞いていたのか。だからこうして気にかけてくれていのか。
仕事のミスも確かにショックだったが、どちらかというと高柳を想って泣いていたなんて言えなかった。
でも純粋に心配してくれたことは嬉しい。
「…わたなべグループに連絡したんですけど、連絡うけてないっていわれたんです。」
ソファーに座り、呂律が回らない口を必死に動かす。