気がつけば愛でした
静奈は昼間の渡辺グループとの一件を話した。
酔っ払っているため、上手く伝えられない所もあったが、高柳は時々相槌をつきながら話を聞いてくれた。
静奈が泣いていても、昔のように鬱陶しいなんて言わず、最後まで聞いてくれたのだ。
「で?そのフォローをしてくれたのは?」
「関谷ぶちょうです。」
「関谷部長?」
高柳が初めて大きく反応した。
関谷部長がフォローしてくれたことがそんなに意外だったのだろうか?
「本当に関谷部長?」
「はい。貴子先輩もいっしょについてきてくれました。」
「諏訪さんも…」
高柳は何かを考えるように目を細める。
静奈はその顔をぼんやりと眺めていた。
本当はこんな仕事の話じゃなくて聞きたいことはたくさんあった。
友香とはどうなったのか。よりをもどすのか。本当に食事だけだったのか。なんでわざわざ来てくれたのか。
いっぱいあるのに、怖くて聞けない。
なのに、ただこうしてそばに居てくれるだけで心地良くて、同時に切なくて、自分の感情がわからなくなる。
わかるのはずっとそばに居てほしいということだけだった。
しかしそんなこと、やはり怖くて言えない。
すっかり臆病になっている。