気がつけば愛でした
高柳のように格好いい人には友香のように綺麗な人がお似合いだ。
勝ち目なんてあるのだろうか。
「橘?眠いのか?」
「いえ…」
「目が閉じそうだぞ」
そう言って目元をそっと触る。
ドキンと心臓が跳ね、その温もりを通して高柳が側にいることを実感させる。
無性に甘えたくなった。
「寝るなら水飲んでからにしろ。明日つらいぞ」
「…のめない…」
「何言ってんだよ。飲んどけって。」
「……なら、高柳さんがのませて…」
水を高柳に差し出して呟くように言った。
水の蓋は開いている。
それを見て、高柳は静奈の言わんとすることを察した。
「橘?」
「高柳さんがのませてください…」
高柳は静奈を見つめる。静奈の意図が伝わったのだろう。
驚いたような、戸惑うような目を向けていた。
お酒の勢いとはこのことだ。普段、言えないことも言える。
静奈は高柳に口移しで、という意味合いを含ませていたからだ。
そして高柳もそれに気付いたのだ。
高柳はしばらく静奈を見つめた後、その手にある水を受け取った。