気がつけば愛でした
憂鬱な気分は晴れない。
高柳に会ったら何て言おうか、そんな事ばかり考えてしまう。
エレベーターの前で思わずため息をつく。
すると後ろから肩を叩かれた。
「おはよう、静奈ちゃん」
「上村さん。おはようございます」
にこやかに上村が隣に立つ。
そう言えば、上村とも久しぶりだった。
まだあの返事もしていない。
どうしようか…。
上村の方をまともに見れずにいると、上村が声をあげた。
「よう、高柳。」
「おはようございます」
今一番聞きたくない声に静奈はドキリとする。
こんな時に会うなんて。
隣に立った高柳をソッと見上げると一瞬目が合ったが、彼は表情を崩さなかった。
「おはよう」
「おはよう…ございます。高柳さん」
何か言われるだろうかと思ったが、高柳はそれ以上何か言うこともなく、いつも通りクールな表情だ。
…それが余計に怖いよ。
そう思ったが上村の手前、何も言えなかった。
上村にも高柳にも気まずい思いでいると、上村が静奈を覗き込んだ。