気がつけば愛でした





「…重い。」



後部座席の我が五十嵐社長が不機嫌そうに呟く。

雨宮社長を見送り、女将に用意してもらっておいた水の入ったペットボトルを片手に車に揺られていた。

沈黙が降りる中、ついに社長が叫んだのだ。



「何でしょうか?社長」
「空気が重い!」



耐えきれず社長は叫ぶ。


「何なんだよ。2人とも何かあったの!?空気が重いんだけど!」



酔っ払っていてもその察する能力は落ちないのか。

さすがと言うべきか。

高柳と静奈の間に流れる微妙な空虚感を感じとっていた。



「何でもありませんよ」
「俺を甘く見るなよ。何かあったか位わかるんだぜ!」



口を尖らせて前の2人に絡む。酔っ払っているからなおたちが悪い。


静奈はチラリと隣の高柳を見るが、社長がうっと惜しいのか、窓の外を眺めたまま無視していた。

弟だから許される態度よね。


静奈はため息を我慢して車を走らせる。



そのまま社長のマンション前まで送り届けた。



「何があったか知らないけど、仲直りしとけよ!」

「喧嘩してませんから」
「いいから!仕事に支障が出る」

「はいはい。わかりました。ではお疲れ様でした」



そう言って無理やりエントランスへと向かわせた。


無事に中に入ったのを見届けると運転席に戻る。



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