気がつけば愛でした



背中に回る腕に力が入る。ギュッと抱きしめられ、静奈はもがくが高柳がそれを許さなかった。



「やっ…」

「なぁ、俺のことまだ嫌いか?」



高柳が耳に顔を寄せ低く呟き、その声に背中がゾクッとする。



「言って…俺のこと嫌いか?」



なんでそんなことを言うのかわからなかった。

いや…本当は頭の隅ではわかっていたのかも知れない。

でも高柳は友香との婚約話を否定しなかった。それには高柳の立場的なものが含まれているのにも薄々気がついていたから。

だから…。



「…嫌い…」



静奈は高柳の胸に顔をうずめながら呟いた。



「高柳さんなんか嫌い…」

「本当に?」

「嫌い!嫌い、嫌い、嫌い、きら…」



それ以上は言えなかった。言わせてもらえなかった。



高柳との3度目のキスは優しかった。


今までみたいなちょっと強引なキスなんかじゃなくて、静奈を気遣うような優しいキス。

荒々しさなんかなくて、静奈の唇を確かめるように何度も口づける。

そして見下ろす目が優しくて余計に泣けてくる。


「っ…高柳さんなんか嫌い…」

「うん…」



うん、なんて言いながら優しいキスをするから。
嬉しくて、心地よくて、もっとしてほしくて、応えずにはいられない。



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