気がつけば愛でした




「あなた、ご存知かしら?律の本当の立場。」

「はい…」



本当の立場とは、社長の弟ということ。それを知っているかということだろう。
静奈が頷くと面白くなさそうに口を曲げた。



「へぇ…知ってるのね。なら話は早いわ。社長の弟と取引先の社長の姪。その2人が結婚すればうちもそちらも安泰だし、鮫島グループに脅かされることもない。このままだとうちのKグループは鮫島に買収され、そちらは大きな取引先の一つを失う。損失は相当なものになるでしょうね。ねぇ、橘さん。会社人なら…社長秘書なら何が一番いいかわかるわよね?」



静奈は言葉が出なかった。 薄々は感じていたが、こんなにも会社にかかわるなんて…。

静奈の青ざめた表情を見て、友香は満足げに微笑んだ。



「よく考えてほしいの。聡明なあなたなら、わかるでしょ?」



そう言って友香は伝票を持って喫茶店を出て行った。

静奈は動くことが出来なかった。




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