気がつけば愛でした
しかし友香がでる気配はなかった。
「なんで出ねぇんだよ」
思わず舌打ちをして携帯を切る。
高柳は取りあえず会社へと急いで戻った。
その頃、静奈はなぜか五十嵐社長と友香と共に社長室のソファーに座っていた。
突然の友香の訪問にお茶を出しに来たのにそのまま引き止められたのだ。
「で、友香さん。橘まで引き止めて、お話とは?」
社長が穏やかに話しかける。
いや、穏やかに見せているだけだが。
「突然の訪問、お許し下さい。大切なお話がありましたもので。」
友香はそう言うと、チラリと静奈を見る。その視線にドキリとして思わず俯いてしまった。
「話?」
「まず、こちらを。」
友香は鞄から大きめな封筒を取り出し、中身を出した。
「これは…」
「そちらの関谷さんと鮫島社長、そしてウチの重役です。」
封筒の中から出てきた薄暗い数枚の写真には確かに関谷部長が写っていた
「密談写真です。その様子だと五十嵐社長はご存知なかったようですね」
社長は驚いたように写真を見つめる。静奈も言葉が出なかった。
「まさか、アッサリ証拠を見せられるとはな…」
「関谷さんは人望が厚い方だとか。社長が嘘だと疑いたくなるお気持ちもわかります。」