気がつけば愛でした


五十嵐社長が黙って考え込んでいると、静奈がそっと口を開いた。



「社長、社長の本音はどうですか?」

「本音?」

「はい。社長自身のお気持ちです。」



静奈は真剣な顔で社長に問うた。
その表情に一瞬戸惑う。


「俺の本音は…2つある。個人的には律の気持ちに反した結婚は反対だ。経営者としては…、悪い話ではない。」



それが本音だった。

それを聞いてゆっくり頷く。



「なら、経営者としてお考え下さい。」

「えっ!?静奈ちゃん!?」


静奈の言葉に社長が動揺する。



「社長。社長には何百人という社員の生活を抱えています。経営者として社員を守っていただかなければなりません。」

「静奈ちゃん。それはそうだが…」

「幸い、高柳さんと友香さんは元恋人同士でした。高柳さんの気持ちも以前のように戻るかもしれませんよ。」



静奈はにっこり笑った。
その表情に社長はため息をつく。



「2人が結婚しなくても経営には響かないが。」
「マイナスにならないとしても、結婚したらプラスにはなるんですよね」
「本気で言ってる?」

「はい」



静奈の目を見た社長は大きくため息をついた。



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