気がつけば愛でした
「橘さんもこう仰っていますよ」
友香は満足そうに微笑んだ。
社長は舌打ちしたい気持ちを抑える。
「静奈ちゃん。君の気持ちはわかった。もう下がりなさい。」
「はい。失礼します」
静奈は頭を下げて社長室を退出した。
よく、泣かなかったよな
自分を誉めたくなった。
考えて、考えた末の決断。高柳に相応しいのは自分ではないと思った。
だって、近すぎて忘れていたが、彼は社長の弟なのだ。
次期の重役―……副社長なのである。
相応しいのは一社員の自分ではない。
「静奈?大丈夫?」
「はい」
貴子に微笑み、仕事に取りかかる。
大丈夫。
これでいい。
暫くすると、社長室の扉が開いた。
「お時間を取らせてしまいすみませんでした。」
「いえ。こちらこそありがとう」
にこやかに会話しながら2人が出てくる。
交渉成立…かな。
社長が友香をエレベーターまで見送りに行っている間に、静奈は社長室の片付けに入った。
社長の机には友香からの証拠写真が置いてある。