気がつけば愛でした
その時。
身体が軽くなった気がした。
いや、静奈の身体が軽くなったといいより、身体にかかっていた重みがなくなったのである。
「ぅあっっ!?」
激しい物音と叫び声に静奈が目を開けると、床に上村が転がっていた。
痛みにうずくまる上村に掴みかかるスーツ姿の男性の後ろ姿。
静奈には見覚えのある後ろ姿だった。
「た、たか…」
「律!止めろっ!」
後から入ってきた五十嵐社長が慌てたように高柳を制止する。
「止めろ。静奈ちゃんが見てる。」
そう言われ、軽く舌打ちをして上村の胸ぐらから手を離した。
「た、高柳さん…?」
静奈はベッドから身体を起こして弱々しく名前を呼んだ。
振り返った高柳は眉間にシワを寄せ、静奈の身体に上着をかけた。
「大丈夫か?」
高柳の問いに黙って頷く 。
高柳はホッとしたように静奈を引き寄せた。
「心配した…」
「ごめんなさい…」
高柳がいる。
もう大丈夫なんだ…。
そう思ったら涙が溢れてきて、高柳の胸に顔をくっつけた。