気がつけば愛でした




―――――――………



ひとりで歩けるようになった静奈を連れて高柳は部屋を開ける。


リビングの電気を付けると静奈はおずおずと声をかけてきた。



「高柳さん…。お風呂借りていいですか?…その…気持ち…悪くて…」



後半は消えそうな声で目を逸らす。

高柳は思わず、何をされたか問いただしたくなったがグッとこらえた。



「いいよ。着替え出しておくから」



ペコっと頭を下げ、お風呂場へ消えていった。


静奈から上村を引き離し、床に突き飛ばした後、なぜ一発だけでも殴っておかなかったのかと後悔した。


最悪な状態だけは免れたかもしれないが、上村に身体を触られたことは事実だろう。



行き場のない怒りが渦巻く。



高柳は冷蔵庫からビールを取り出し、一気に飲み干し缶を握りつぶした。












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