気がつけば愛でした
「上村は?」
『あぁ。警察で事情を聞かれている。あいつ調べたら軽微だが横領もしていたからな。会議にかけるまでもなく懲戒解雇だ。どうせ鮫島はあいつをただの駒にしか思ってない。確実に見捨てられるだろうな。田舎にでも帰るんじゃねぇか。』
社長は吐き捨てるように言った。
「関谷部長は?」
『とりあえず、脅されていたとはいえ、このまま黙って見過ごすわけにはいかない。』
「…クビですか?」
確か関谷部長には中学生の娘がいた。
部長が職をなくしてはこれから大変だろう。
それに。
あれだけの営業能力を持った人をなくすのは勿体無い気がした。
『…まだ重役会議にかけてはいないから決定とはいえないが…』
「じゃぁ、やっぱり…」
『いや。俺は彼をクビにするのは惜しいと思っている。だから彼には、九州の事業所へ行ってもらう。』
「九州の?」
九州の事業所といえば二年前に満を持して作ったところだ。
しかし成績は芳しくなく、頭を悩ます一つだった。