気がつけば愛でした
『彼にはそこへ行って成績をあげてもらおうと思っている』
なるほど。
高柳は小さく微笑んだ。 やはり社長も関谷部長を切ることは痛手だと考えたのだ。
本社から離れ、九州と遠くはなるが、彼がやり直すには良い環境かもしれない。
「鬼の関谷を九州で見れるかもしれませんね」
『あぁ、それを期待している』
社長が笑うのがわかった。
フッと、こんな風に話して笑うのは初めてかもしれないと思った。
10年前に初めて会い、いつもやたら絡んできたが、こんなに穏やかに話したことはなかったのではないだろうか。
『なぁ、律。』
「はい?」
社長が柔らかく名前を呼んだ。
『静奈ちゃんと上手くやれよ?』
「社長…」
『ちゃんと話したほうがいい。』