気がつけば愛でした



この人も心配していてくれたのか。


周りに無関心だったのは自分なのだな。



「言われなくてもわかってます。俺のことより自分の心配して下さい。良い年なんだから。」

『なんだよ~、可愛くねぇ弟だな。』



社長が拗ねたような声をだす。

“弟”

彼はいつもそう言ってくれる。

自分の両親の不仲の原因は高柳なのに。
恨んでいてもおかしくないはずなのに、むしろ彼は高柳を歓迎していた。


「あの…」



そのことを聞いてみようかと思った。


しかし…



『どした?』

「いえ…」



やはりまた別の機会にしよう。



「何でもない。ありがとう。…兄貴。」

『!!』



社長が何か言う前に一方的に電話を切った。


少し恥ずかしかったが、たまには素直になるのもいいだろう。





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