気がつけば愛でした



友香にも電話すると彼女も直ぐに出た。

簡単に事情を話してお礼を言う。

友香は黙って聞いていた。



『別にお礼を言われることじゃないわ。あのこのためじゃなくて貴方のためだもの』

「…ごめんな、友香」



高柳は外を眺めながら友香に謝る。


夕方、友香に電話したとき、社長室に彼女はいた。

社長室に行ったのは友香なりの最後の手段だったのだろう。

しかし、五十嵐社長は友香の交渉をはねのけた。
そしてそこへ高柳からの電話。

ここまでしても結婚は出来ないと痛感したようで、最後は疲れたように『もういいわ』と言っていたのだ。

それ以上は虚しくなると。


友香なりに本当はわかっていたんだろう。

だが後に引けない意地もあったのかもしれない。


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