気がつけば愛でした



社長もそれをわかっているから尚更だった。



「話はそれだけですか?」

「あぁ…うん…」

「じゃぁ、帰りますね」


社長の様子とは裏腹に気にしてないような高柳は静奈を促して秘書課を出て行く。



静奈はチラッと高柳を見上げた。



「何?」

「あ、いえ…その…」



静奈は口ごもるが高柳は静奈の言いたいことがよく分かっていた。



「社長の母親とは親父の葬式んときに会った。…俺はあの人と会わない方がいいんだ。」

「そうなんですね…」

「まぁ、誰だって旦那の不倫相手の息子とは会いたくないだろ」



苦笑しながらエレベーターに乗り込む。


この人は…。


本当にいろんな物を抱えているのだな…。



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