気がつけば愛でした



「お袋…」



いつの間にか来ていた圭子が真っ直ぐこちらを見ていたのである。



「どういうことかしら、これは」



これ、とはもちろん高柳のことであろう。


しかし、圭子は高柳を見ずに社長に問いかける。

社長は思わず額に手を当てた。


まさかこんな形で圭子に見られてしまうとは…。


「いや、あの…」

「なぜ、この方がここにいらっしゃるのかしら」


言葉は落ち着いている。
それが余計に怖かった。


「お袋、これには色々とあって…」

「色々?あなた達は色々と会っているっていうの?」



圭子の静かな声は逆にロビーに響き、複数の社員は振り返る。



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