気がつけば愛でした
「橘さん。わかっていても、感情が割り切れるとは限らないの」
圭子はそう悲しそうに呟いた。
その声に静奈は顔を上げる。
「酷いことをいう女だと思ったでしょう?」
「そんなこと…」
「いいの。自分でもわかってる。暁斗の思いも、高柳さんの思いも…知っているくせに…、実際、高柳さんを前にすると感情が先走ってしまう。彼に彼の母親の姿を重ねてしまうの。そして主人の姿も。嫉妬の感情よね。未だに嫉妬しているのよ。」
“それくらい主人を愛していたの”
圭子はとても悲しそうに微笑んでいた。